INAGAKI Laboratory
Neo! Milk Science
ミルクサイエンスに文明開花を
牛乳に含まれるラクトフォリン(Lactophorin)。免疫の要となるリンパ球のホーミング現象をつかさどる血管内皮GlyCAM-1のアミノ酸配列と高い相同性を示すことから、milk GlyCAM-1という別名を持ちます。しかしながら、milk GlyCAM-1には、血管内皮GlyCAM-1のような生命現象の根幹に関わる決定的な役割が見つかっていません。
私たちは、このラクトフォリンが乳幼児下痢症の主因であるロタウイルスの複製を強力に阻害することを見出しました。
ウイルスは自分自身で複製できません。細胞に侵入したウイルスは、細胞が備える複製装置をハイジャックして子孫ウイルスを残します(上図)。ところがラクトフォリンを細胞に与えてからウイルス感染を行うと、ウイルスはどういうわけか子孫を残せません。
ラクトフォリンは、細胞に侵入してきた賢いウイルスから、どうやって細胞を守っているのでしょうか。非常に難しい問いですが、この謎が解けたとき、ミルクの本当の役割の一端が見えてくるはずです。
Gut Flora Arrangements
ヒトと腸内細菌のやさしい共生
腸内細菌培養モデル(Takagi et al., PLoS One, 2016)を用いて、食素材が個人の腸内細菌叢にどのような影響を与えるのかを調べています。
具体的には、ヒト糞便をGAM(Gifu Anaerobic Medium)に植菌・培養して、培地中に個人の腸内細菌叢を再現します。食素材を加えて培養した場合と加えずに培養した場合を比較することで、食品素材が腸内細菌のバランスや培養液pH、代謝産物にどのような影響を与えるかを評価します。
24ウェルプレートを用いた1 mL培養から、ジャーファーメンターを用いた100mL培養まで、さまざまなスケールで培養しています。
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日本の伝統文化である"生け花"のように、それぞれの花(腸内細菌)の特徴を良く理解し、尊厳を守り、全体のバランスを整えていくことで人々の健康に貢献していきたいと思っています。